お墓のはじまり
仏教本来の考え方からすると、お墓は必要ありません。なぜなら、インドでは死者を火葬するのが一般で、焼け残った骨は川に流したからです。この風習はインドで現在でも続いています。一方、日本では昔から土葬が行われていました。死をけがれたものと考え、死者に対する恐怖から埋めた土の上に石をのせました。これが現在のお墓のはじまりです。
お墓は日本では身近なものです。「私が死んだら、海にまいて鳥のえさにしてくれ。」という考えも一つのあり方ですが、残された方にとって、お墓は「いつでも亡き人に会える場所」として、心のよりどころになっていることも事実です。先祖供養はお釈迦さまの教えではありませんが、人生に迷ったとき、ご先祖さまのお墓の前で静かに心を落ち着けてみるのもいいかもしれません。
お墓参りの話
よく、「お墓参りっていったい何をするのが正しいの?」と聞かれますが、お墓参りにルールはありません。ですから、ここでは一般的なことをお話しします。
(1)まず、お墓やその周りの掃除をします。
(2)枯れた花をぬき取り、新しい花をかざります。水もかえます。
(3)お供え物があれば、お供え物をします。(お墓参りが終わったら、持ち帰ります。)
(4)ロウソクに火をつけ、線香をたきます。
(5)墓石に水をかけます。
(6)合掌してお参りします。
塔 婆(とうば)
塔婆(とうば)は、正式には「卒塔婆(そとうば)」といい、昔のインドの言葉で「塔」を意味します。もともとは、お釈迦さまの遺骨をおさめた塔のことでした。インドでは死者を埋葬しませんが、人が亡くなると「土饅頭」をつくって亡き人をしのびました。やがて仏教が中国をへて日本に伝わると、「五重塔」や「三重塔」となって各地に建てられました。塔婆は、はじめはとても大きなものだったのです。
時代が進むと、塔婆を建てることが亡き人の功徳(くどく)になるとして、やがて現在のような木の板の塔婆が使われるようになりました。塔婆にはよく見ると五つの「きざみ」があります。これは「空・風・火・水・土」をあらわし、仏教ではこれらの五つがあらゆるものを形づくっていると考えられています。